概要
以前の記事( 【パナソニック汐留美術館でも現在開催中】 フランク・ロイド・ライト展 〜 博物館明治村へ)に引き続き、東京のパナソニック汐留美術館で開催された「フランク・ロイド・ライト展 世界を結ぶ建築」と東京で見られるフランク・ロイド・ライトの建築を巡った。
フランク・ロイド・ライト展 世界を結ぶ建築
フランク・ロイド・ライト展の概要については前記事に譲り、ここでは豊田市美術館とパナソニック汐留美術館の違いについて簡単に触れる。
豊田市美術館は立地を生かした広い展示室を持つため、展示にゆとりがあり来場者数としても東京と比較して少なく快適に観覧できた。
比較して、パナソニック汐留美術館はビルのワンフロアにある比較的小さな展示空間のため、展示にゆとりがなく通路の狭さと展示の圧迫感が目立った。また、来場者数も多く休日は入場に2時間待ちとなるケースも見らたため文字の多い今回の展示では落ち着いた観覧は難しかった。フランク・ロイド・ライトの大規模な回顧展としては日本で約26年ぶりの開催となるが、多くの来場者からライト建築への関心の高さが窺える。
帝国ホテル
初代帝国ホテルは渡辺譲の設計により明治23年(1890)に「日本の迎賓館」として開業した。その後、本館の老朽化と利用者増加によって建て替えられた新館がフランク・ロイド・ライト設計のライト館であり、2代目の帝国ホテル本館となる。ライト館の開業は大正12年(1923)9月1日で開業当日に関東大震災に襲われたが、幸いにもホテルに大きな被害はなかった。残念ながらライト館は老朽化により1968年に取り壊されており、現本館は昭和45年(1970年)に竣工した橋貞太郎設計の3代目に当たる。そして今年2024年から2036年にかけて4代目本館が田根剛の設計で建設される予定である。
上記の通り、現在の帝国ホテルはフランク・ロイド・ライト設計のライト館ではないが、本館中2階のオールドインペリアルバーは唯一当時のままライト館の装飾を残しており、店内奥の大谷石や壁のテラコッタは当時のまま残されている。また、その他にも所々にライトの意匠を感じることのできる装飾や展示が残されており、本館メインロビーにはライト館のメインロビーの壁のデザインを元に作成された大谷石のレリーフや、ライト館で実際に使用されていた机と椅子が展示されている。
現在(2023年1月1日~2024年3月31日)、オールドインペリアルバーではライト館 開業100周年記念カクテル「LUGEND」「100年の感謝~百の香りに包まれて~」が販売されており、歴史あるバーで味わうカクテルは格別の味わいであった。

自由学園 明日館
自由学園明日館は大正10年(1921)に自由学園の校舎としてフランク・ロイド・ライトの設計で建設された。また、隣接する「講堂」は昭和2年(1927)にフランク・ロイド・ライトの弟子である遠藤新の設計で建設された。
現在は校舎としての役割は終え、講演会、コンサート、セミナー、会合などでの部屋単位での貸出やウェディングなどの用途で幅広く活用されている。このように一般利用される機会が多いため、見学の際は公式HPの見学カレンダーを予め確認する必要がある。
見学可能日には明日館のスタッフよる建物解説が開催されているが、私が見学をした日は現役の自由学園中等科の学生による建物解説が学園のインターン制度の一環として開催されていた。中等科の生徒3名による明日館の部屋毎(教室、食堂、講堂、など)の解説があり、生徒さんが現在学んでいる東久留米市にある校舎との共通点や違いを交えた、とても興味深い解説であった。
帝国ホテルのライト館が解体された現在、東京でフランク・ロイド・ライトの建築を間近で感じることのできる唯一の施設となっている。(東京にはフランク・ロイド・ライト設計の「旧林愛作邸」が現存しているが、現在は一般非公開となっているため、一般公開されているライト建築は自由学園 明日館のみである)
建物としてはフランク・ロイド・ライトの特徴である大谷石や幾何学模様が各所で活用されており、ライト建築の哲学をじっくりと鑑賞することができた。